“親の因果が子に移り”という言葉があります。
親が子どもに継がせたくない因果を持っていたら、その因果は親から子どもへ、そしてまたその子どもへとずっと引き継がれていきます。
親の姿を見て育てば、親を嫌っていた子どもが、また大人になって親と同じことをやってしまいます。
そして、その子どもがまた同じことをやってしまいます。それが代々続いていきます。
何と悲しいことでしょうか。
その因果は、どこかで修正しなければいけません。
それには、自分が真我に目覚めるしかないのです。
真我に目覚めることができれば、どんな因縁、因果も消し去ることができるのです。
Hさん(38・仮名)は、
自分をとてもかわいがってくれていた父親が、六歳の時に突然蒸発してから、母親と母方の祖母からひどい虐待を受けて育ちました。
それは、兄弟の中で彼女だけが、とても父親に似ていたからでした。
「お前は橋の下から拾ってきたんだ」
「勉強なんかしなくていい。お前は女中なんだから」
「お前は人にもらわれるはずだったんだ」……、
働く母親に代わって、Hさんを育てた祖母の口から出るのは、いつも彼女をののしる言葉ばかりでした。
彼女は、たまらなくなって、こっそり父親の実家に逃げて帰ったりしましたが、
その時は、必ず家に帰ると母親から吹き飛ばされるほど殴られたそうです。
そろばんで叩かれ、部屋中に血が飛び散り、体はあざだらけになりました。
彼女は、小学校から高校まで、学校でもいじめられ続けました。
「どうしてこんなに辛い目に合わなきゃいけないんだろう。
私は何のために生まれてきたんだろう」。
彼女は小さい頃から、そう考え続けてきました。
やがて彼女は結婚し、三児の母となるのですが、
今度は、小学校に通う長女が、学校でひどいいじめに合っていることを知らされました。
長女へのいじめは、中学校に入るとますますエスカレートしてきました。
自分自身も人間関係で悩み続けていた彼女は、何とかしなくては……と思い、藁をもつかむ気持ちで真我開発講座を受けに来ました。
橋本さんは、受講を通して、自分の中に渦巻いていた膨大な量の恨み、つらみ、憎しみを、次々と捨てていきました。
そして、ようやくその一番奥にある真我に出会うことができ、小さい頃から探し求めてきた“自分の生まれてきた意味”を知ることができたのでした。
「私は、これまで受け継がれてきた悪い因縁を断ち切らなければならなかったのです。
私の代で断ち切らなければ、それは子どもに引き継がれ、その子孫へと永遠に続いていくことでしょう。
娘の姿が、それを教えてくれていたのです。
今までの苦労のすべては、“自分の生まれてきた意味”を知るために、私が経験しなければならなかった大切なステップだったのです。
そう気づいた時、これまでの辛く苦しい思い出が、すべて感謝に変わりました」
そして、このことに気づくと同時に、今まで憎くて仕方のなかった祖母への気持ちが、まったく変わってしまいました。
「祖母は、私をいじめることしかできなかったんだ。そうしないと自分がもたなかったんだ」ということに気がついたのでした。
そして、心配していた娘さんも、徐々にいじめられなくなっていったのです。
では、なぜ、これほどまでも辛く苦しい人生を送り、親や周りに対する凄まじい因縁を背負っていた彼女が、
真我に目覚めることによって、因果をきれいに消すことができたのでしょうか。
それは、真我が、自己の内にある神の心、愛の心、光の心だからです。
仮に、一億年前からの暗闇と、昨日できた暗闇が、ここにあったとします。
その上から光を照らしたらどうなるでしょうか。
当然、両方とも同じように光り、その暗闇は消えることでしょう。
真我の神の心を引き出すことによって、私たちの因果、先祖の因縁、前世の因縁はことごとく愛に変えることができるのです。
受講後、さらに奇跡が起きました。
彼女をいじめていた祖母は、数年前から末期の肺ガンでずっと入院していたのですが、ガンは全身に転移してしまい、手術もできず、
「もう手の施しようがない」と医者から言われる状態でした。
彼女は受講の翌朝、寒空の中病院へ駆けつけ、ベッドに横たわって目を閉じたままの祖母を見て思わず手を握りました。
すると、何と祖母は目を開けたのです。
それから一週間通い続けて、祖母の手足や背中をさすってあげました。
すると、その二週間後のことです。レントゲンを撮ると、何とガンが消えていたのです。
肺には、肺炎の痕跡のようなものしか残っていませんでした。
そして、祖母は彼女に「今まで苦しめてごめんな……」と言いました。
こうしてHさんとおばあさんとは、完全に和解することができたのでした。