経営者になるためにセールスの世界へ面白かったのは、こういった出来事でした。
今はどうか分かりませんが、当時は向かい同士に入り口がありました。
ですので、向こうの話が全部聞こえるわけです。
私はめくらめっぽうに、思いっきり大きい声で熱意だけでやっていました。
そうしたら、私の熱意が向こうの家まで伝わって、売ることができました。
契約して手付金をもらい、次に向かいの家に行ったら、その家の人がお金を用意して待っていたのです。
私のセールスを聞いてくれていたので、立て続けに売れました。
つまり、同時に2件セールスしていたことになります。
「あまり考えない方がいい」。
それが当時の結論です。
そして、私があまりに毎日売ってくるので、営業所の所長が私を少し疑い始めました。
本当に売っているのか、勝手に契約書を書いているのではないかと、お客さんに直接電話して調べたのです。
すると、勝手に契約書を書くどころか、どうも私の評判がいいということが分かったようでした。
私はキャンセルが一番少なかったこともあり、上司からすれば「なぜだろう?」と、疑問に思ったようです。
「どう見てもうまいはずがない。
なぜ彼がこれだけ毎日売ってくるんだ?」と。
私は、新人賞までもらっていましたから。
「ちょっとここで、先輩たちもいる前で、
セールスをやってみろ。どんな売り方をしてるんだ」と、興味を持ち始めた所長に言われました。
私は、先輩社員の一人をお客さんに見立てて、実際にどうやって営業をしているのか、みんなの前で実演しました。
一生懸命、へたくそなりにやりました。
先輩はみんなうまいわけです。
私は一番新人だから、どう見ても私が一番へたくそなんです。
実演を終えて先輩たちの顔を見たら、やはり私が思った通り、「なんだ、この程度か……」という感じでした。
ところが、所長だけは違いました。
「素晴らしい!」と言われました。
私のセールスを「うまい!」と言うのです。
「どうだ、おまえたち。見たか、彼の熱意を!前のめりで食いつかんばかりに話してるじゃないか。
これだよ。おまえたちはテクニックにこだわってるんじゃないか。彼のこの熱意だよ。
この情熱だよ。この迫力だよ。この真剣さ。これだよ。分かったよ。彼がいっぱい売ってくるのは」と言ってくれました。
情熱、熱意、迫力、興奮。
これが私のテーマになりました。
「やっぱりそうか」と、確信を持ちました。
100万ボルトの熱意と100万ドルの笑顔と、両方とも100万です。
この二つだけを心掛けました。
あとは、数をたくさん回ることが大切です。
だんだんと、どういった時に売れるのかが分かり始めました。
お客さんのところへ行って話をしてる時、私の汗がポトッ、ポトッとパンフレットに落ちた時に売れるのです。
この汗が目安なのです。
だから、汗が出るぐらい真剣に話していました。
その熱意と情熱が相手の心を動かし、営業成績と関係するのだと、毎日の訪問を通じて分かってきました。
それからは「売上ゼロの日を作らない」というのが私のテーマでした。
当時からフルコミッションですから、給料もグッと上がりました。
コックさんの時と比べると、5倍ぐらいになりました。
現在ではたいした金額ではありませんが、コックさんであればせいぜい3万円ぐらいだった月収が、15万円ぐらいになりました。
熱意、情熱、迫力と、訪問件数が大切なのはすでに述べましたが、もう一つ大切なのが笑顔です。
相手は女性です。女性は、ニコッとする人にものすごく好感を持ってくれます。
それらが全部収入に変わりました。
言い換えれば、真面目にやるということです。
営業というものは、誰も見ていませんから、いくらでもさぼれるわけです。
喫茶店でお茶を飲むこともできるし、昼寝することもできます。
だから自己管理が重要です。
人が見ていようが見ていまいが関係なく、自分でちゃんとやらなくてはいけません。
真面目にやることが、そっくりそのまま収入になって跳ね返ってくるからです。