営業の極意~全知全能を懸けてやる -【11】2015/01/10

そうしたら、奥では私に見えるように布団をしいてるんです。
「帰れ」と言わんばかりです。
布団を見て、「何くそ」と思いました。
もし、家族がみんな布団の中に入ったら、私は枕元で頭の上から1人で朝までしゃべってやろうと思っていました。

でも、不思議に罪悪感はなかったですね。
ボロボロに言われたあの時にぶっとばしてるよりはいいだろうと思っていました。
当時、私は23歳ぐらいでしたから、40年ぐらい前のことです。
夜中の12時近くになって、とうとう当時のお金で40万円のダイヤモンドが売れたんです。
その人が買ってくれたんです。
「馬の骨」とか「石ころ」と言った人がです。
ぎりぎり間に合ったのです。

契約書を書いて、その人の家から出る時に靴を履いてたら、トヨタのY田さんが頭の上から私にこうやって言うのです。
「あんたには勉強になったよ」と。
全知全能を懸けてやりましたから、この日はまさに私にとって見本の1日になりました。
命を懸けてその1日をやりましたから、ふらふらになったんですよ。
「人間、神経使うと、こうなっちゃうんだな」と。
まるでお酒を飲んだみたく、真夜中にふらふらして帰っていったのです。

その時、帰り道で「あれっ?」と思いました。
その40万円のダイヤモンドというところに「あれっ?」と思ったのです。
そう言えば、2~3万円の安物もいっぱいありました。
もし私がしつこいだけで、お付き合いで買ったとしたら、それで終わったはずです。
しかし、40万円のダイヤモンドを買ってくれたのです。
「ああ。俺のことを信用してくれたんだ。分かってくれたんだ」。
そして、帰りは「あんたには勉強になったよ」と言ってくれました。
向こうもセールスマンで、人のことを馬の骨だ、石ころだと言いたいことを言って、絶対100%買うタイプではありませんでした。
最初に会った時には彼の奥さんはおらず、そのボロボロに言ったセールスマンだけです。
彼も仕事中だったのです。
でも、その日のうちに売れたのです。

この体験は大きかったですね。
その時に「ああ、商売とは、営業とは、町を開拓するんじゃないんだ。お客さんを開拓するんじゃないんだ」と分かったのです。
己の心を開拓するんだと。
だから、決定権はお客さんではないのだと。
自分なんだ、売るほうなんだと。

己を開拓する。
昨日までできなかったことを今日もう1歩やる。
また次の日できなかったら、もう1歩やる。どんどん進化してくる。
「好きだ、嫌いだ」とか「腹が立つ」とか、そんなこと関係ないんだと。
それを全部乗り越えるんだと。
それもセールスなんだと。

そうしたら、売れるわ、売れるわ、売れるわ。
全部こちらですから。
普通のセールスマンからすれば、一番最悪の人に売れたのですから、50kgのバーベルを持てたら、49kgも48kgも47kgも全部持てるわけです。
一番難しい人に売れたら、あとは全部簡単な人になるわけです。
その後、すごいことになりました。
月収は、当時で100万円以上になっていました。

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